ビジネスアプリケーションのシームレスな連携で実現する新しい営業の世界
金木:手島さん、このたびはオフィスまでお越しいただきありがとうございます。今後の連携を深めていくにあたり、対談を通じてお互いのビジョンについて改めてお話しできればと思います。
手島:お招きいただき、ありがとうございます。改めまして、マイクロソフトの手島です。クラウドソリューション事業の責任者と、社員のワークスタイルイノベーションの全社のリードを担当しております。
今年から新たに開発基盤の一部をMicrosoft Azureに移行された金木さんのお話を聞きながら、Microsoft全体のポートフォリオを踏まえてどのように一緒により強力にお客様のビジネスを支援できるのかを考え、一緒に舵を切っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
金木:まず、簡単に私たちのサービスのご紹介をさせてください。「UPWARD」は、フィールドセールス向けのクラウドサービスを提供し、大手企業を中心に300社以上に導入いただいています。マンスリーで約98%という高い契約継続率を誇り、直感的で扱いやすいため効果が出やすく、定着化しやすいということが特徴です。
金木:日本では、フィールドセールスとマネージャーが「CRMやERPの情報が現場の営業活動で上手く使えない」「営業現場の見える化がリアルタイムにできない」といった多くの課題を抱えています。そうした問題を、顧客接点情報を簡単に自動入力する機能や現場へインサイトを返すことで解決しています。
私たちの扱う領域を端的に表す言葉として、“セールスエンゲージメント”があります。
金木:CRMデータベースの一つ上の層にこのセールスエンゲージメントがあり、その上にセールスパーソンを通じてお客様との接点を設ける営業活動の層があります。この訪問、電話、メール、オンラインミーティングといった営業活動における顧客接点を、自動的に、かつ最適化した形でいかにCRMに入れていくのか。更には入れたデータとCRMの情報を掛け合わせて、どのように現場の営業にインサイトを提供していくのか。
顧客接点はOutlookメールやTeamsのオンラインミーティングなどチャネルが多岐に渡りますが、トランザクションも含め記録化していくことに、ぜひチャレンジしたいな、と。こうした構想を含め、ますます貴社と協業を深めていければと考えています。
手島:CRMを軸としたフィールドセールスの強化というのはこれからも需要が多いですし、日本はグローバルの中でも生産性に課題があるため、こうしたチャレンジは特に高いニーズがあるかなと感じています。
ただ一方で、2020年より新型コロナウイルスによるパンデミックが起きましたよね。フィールドセールス領域における需要の変化はあったのでしょうか?
金木:手島さんのおっしゃる通り、事業自体は、売上が一時期落ち込んだり、「このソリューションは大丈夫なのか」といったお声をステークホルダーの皆さまから多くいただきました。ただ、結果としては現在も成長を続けています。
フィールドセールスの方々による“ラストワンマイル”はやはり重要で、最終的なお客様とのコミュニケーションが企業の差別化や顧客満足度に繋がるものです。それを科学したり、かつての行き当たりばったりの営業はやめよう、という方向性で、データを活用した勝てる営業組織づくりへのシフトが起きているため、お引き合いが増えています。引き続き営業DXというのはコロナに関係なく需要があり、ご支援できるのではないかと考えています。
手島:そうですね。結局DXをシンプルに言い表すと、「人のイノベーションの打率をどう上げるか」ですよね。営業という骨格のDNAを型としても、そのやり方や顧客接点の在り方は日々進化しています。そこにどうやってテクノロジーが新しい洞察を与えて、人の潜在能力を引き出すかかな、と。
私たちマイクロソフトでも、将来起こり得るワークスタイルとして、どういう職種の方々がどういうイノベーションの機会を迎えるのかという未来のデザインに取り組んでいます。
Teamsや、Azure、その他のDynamicsやPower Appsもそうなのですが、“人を軸にしたイノベーション”という指標で私たちも設計を行なっていますので、金木さんの考え方と共感するところが多くありますね。
金木:やはり人の可能性、人が生み出す創造性やイノベーションという部分を重視しているという点では、通じる部分が多くありますね。
今少しその部分にも触れられましたが、マイクロソフトとしてお客様にお伝えしている世界観について、もう少しぜひ詳しく教えてください。
担い手不足の時代に
営業組織はどう対応すべきか?
PDF 18ページ
サービスご紹介資料
「UPWARD」のより詳細な情報をご紹介しています。
手島:私たち自身の状況からお伝えしますと、グローバルに18万人いる社員のうち、データセンター勤務者などを除く16万人が在宅勤務になりました。この変化の中で、大きな学びがありつつも、人間関係やコミュニケーション、社員のコラボレーションという面ではチャレンジも見えてきました。
リモート勤務が主となり、従来通り“毎日出社したい”というニーズは2%とほぼありません。働く場所に選択肢があって、働き方や働きがいという部分に軸足をおく、ハイブリッドワークという考え方が浸透しています。
先ほど金木さんのおっしゃっていた、フィールドセールスの方からの需要というのもそういったワークスタイルの部分からも来ていますでしょうか?
金木:そもそものフィールドセールスパーソンは、まず会社へ出勤して、お客様に会って戻ってくるというスタイルでしたが、この変化の中でそれがいかに非効率かが浮き彫りになったと感じています。UPWARDであれば日報などのドキュメントワークがモバイル一つで実現し、顧客接点を記録して企業の資産へ変換できるので、その点で需要が高まっているのかなと。
そして、仕事以外の時間はすべてプライベートな時間へ。やるべきミッションを果たせば、あとの時間は用事を済ませたり、自分の生活の中へ戻っていける。そういう世界に、少しずつ近づけるお手伝いができているのかなと感じています。
手島:この点については私たちもグローバルで議論していますが、3つの大きな柱が出てきたかな、と思います。
手島:まずは、距離を“価値”へ。距離が課題になるのではなく、逆に力に変えるために、先ほど金木さんがおっしゃったように、ラストワンマイルにしても社内のセールスステージにしても、お客様との接点の在り方、コラボレーションの仕方というのは、より色々な意味で工夫する領域があるのではないか、と。そのためのイノベーションはどこにあるのかを現在模索しています。
もう一つが、自動化が前提の世界へ。自動化できるところは徹底的に自動化して、本来のイノベーションの打率を上げるために、人間の創造力を活かすために使う時間を生み出そう、と。そのためには安心感を持って、テクノロジーに任せられるところは任せてしまう。自動化をすべきところ、人がやるべきところのバランスを取っていく必要があるかなと。
人とかモノ、全てのあらゆるものが、お互いの阻害要因にならないための自動化をどう実現するのか、引き続き探っていこうと考えています。
手島:最後の一つが、データを企業の力に。直近、データを活用するお客様の規模が、圧倒的に増えています。我々もAzureのシナプスやアナリティクスを通じて非常に多くのご支援をさせていただいていますが、ただ一口に“データ”と言っても、CRMに合うデータもあればERPに合うデータもあり、色々なデータが異なって存在しています。1つのCRM内のみで分析しても、インサイトがどうしても成熟化してしまうという課題があります。
より高度なカスタマーデータプラットフォームとして、CRMの裏で高精度のデータ分析がしたい。異なるシステムにあるデータから、共通で生まれてくる新しいインサイトが欲しい。こういったニーズがコロナ禍で消費材、リテールのお客様を中心に様々な業界の中で非常に増えています。
金木:手島さん、ありがとうございます。特にエンタープライズのお客様のそういったニーズは、我々も肌で感じています。
後編では、こうした変化において求められる、ビジネスアプリケーションの未来について、ぜひ一緒に深掘りさせてください。