新型コロナウイルス感染拡大が企業に与えたDXにおける影響 日本マイクロソフト株式会社クロスインテリジェンスセンター長吉田雄哉様 以下、吉田様:
MicrosoftではTeamsを筆頭に、各種クラウドサービスを提供しているということもあり、非常に多くのご相談をいただいている状況です。 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、「人と人との距離を近づける」ということができなくなっている状況になってしまったものの、会社に行って仕事をするとか、お客様先を訪問するということを前提とした環境やルールしかなかった という方が多い印象ですね。コロナショックの結果として、そういった部分を急ピッチで整えましょう、となっていることは、大きな影響です。 ではその次に出てきているものは何かというと、急ピッチで整えようとした結果、従来からあった課題が露呈してしまって、先に進めない という状況です。 例えば、お家から会社のネットワークに接続する仕組みとしてVPN(Virtual Private Network)などがありますが、そういうものが専用の回線でガチガチにしてあったり、VPNのクライアント数が全社に耐えられなかったり。色々と前提が変わってしまったということによって、取り組んではいるんだけども前に進めない、というケースがかなり多いです 。
UPWARD代表取締役CEO金木 以下、金木: 僕らとしては、コロナの影響については、大手のお客様でも、業種あるいは地域性によってはバラバラかなと感じています 。 例えば、UPWARDのお客様である大手製造業のある会社は全国規模で事業を展開されていて、この期間も主に地方において必要に応じて顧客訪問を行なっていらっしゃる と聞いています。また僕らも、生き残りをかけてファイナンスもしなきゃいけないということで、金融機関を訪問したりすると、大手の金融機関はまだオフィスワークされているのを目にします。 一方で、都内、特にIT系企業については、元々リモートワークの準備を進めていたこともあり、軒並み一気にシフトできているのかなと思います。Afterコロナと言われている3~5月の間に、業種や地域性によって、リモートに対応できる企業、できない企業があるという実情を知ることが出来ました 。
デジタル化ができないと、DXへは進めない 吉田様:コロナショックで、大きな変化がありました。 変化は上振れするものもあれば、下振れするものもあって、例えば業種によってはお客様からの需要が急激に増えたところもあるし、自分たちの仕事がなくなっている、というところもある。 総じて言えることの一つとしては、「距離を近づけること」が出来なくなっているので、オンライン化というのは進む、 ということです。オンサイト(現場、現地)だったものが、オンライン化していく。その場に行ってやっていたことが、オンライン上で出来るようになってくる 、ということです。
例えば、会社に行けなくなったので、業務がオンライン化されますよ、と。そうすると会社の会議室というものも、オンラインになっていかないといけないですし、店頭でPOP描いていましたというのも、お客様が来ないので、マーケティングっていうものをやってきましょう、とか。それこそ営業活動もオンライン化するっていうことになってくると思うんです。 そのボトルネックとして、そもそもデジタルに遅れているということが、結果的に足を引っ張ることになってしまう。もしくは、今ある仕組みがオンライン化との連携が悪い、ということが起きてしまう 。さっきのVPNの話はまさにこういうことなんですけど、今、前提が変わったことによる課題が露呈してきている。 これを前提すると、DXと考えたときに、2つフェーズがあるかなと思います。
そもそもデジタルに対応していきましょう、というデジタル化 が、まず一つ目のフェーズですね。システムの導入や、業務効率化への取り組み、プロセスの改善 、というのもデジタル化になります。背景としては、コストダウンというものが意識的にあるかな 、と。その結果として、デジタルの技術を使っていこう、というものになると思うんですが、私たちが言っているDXは、それを活用してさらに前に進む、という世界観 になっています。 なので、業務効率化というよりは、もっと全社的な視点 だったり、業務プロセスの話よりは、それらで扱われているデータ、営業活動や購買活動で得られるデータ であったり、そういったものがまずターゲットになってくる。それをどう使いましょうか、という話と、そこから更に前に進むということで、価値をどう見出していくか、に議論を進めていかないといけないので、デジタル化ができないとDXはできない んですね。 うちの会社ちょっとね、なかなか取り組みが甘くて、という方々は、まずデジタル化のところでつまづいてしまっている 。デジタル化の取り組みをどんどん進めてきた企業は、今度こそDX、という段階になっている ので、そういうところは如実に分かれてきているのかな、という印象を受けています。
Microsoftの推進する「デジタルフィードバックループ」とは 吉田様: まず業務を効率化しましょう、とデジタル化をしたとして、そこで使われているシステムから得られるデータを、どう流通させるのか。色々なところで使ってもらえるようにするにはどうしたらいいのか。DXを実現するためには、デジタルFBループという考え方を導入していただくことを、お勧めしています 。
この図には切り口が4つあって、一つ目が「お客様とつながる」 という切り口です。 例えば、私たちMicrosoftとUPWARDでは、私たちがツールを提供する側で、UPWARDさんがお客様という関係になると思う。もちろん、DXに取り組まれる方々の先にもお客様がいらっしゃるので、そのお客様とつながる。何を持っているのか、どういった活動に対してどんなリアクションがあるのかとか、お客様についての情報を知る ということです。よくあるのは、WEBページとかでどのくらいスクロールされたか、どこをクリックされたか、マーケティングで活用していきましょう、とか。オンライン上で考えるとそういうところですね。 二つ目は「社員にパワーを」 です。これは、社員としての生産性を高めていきましょう 、ということです。 右上の「業務を最適化 」というのは、デジタル化のところでお話しした、効率的にいろいろなことをやっていきましょう というところです。多くの企業が、割と従来から取り組まれているところかなと思います。 最後の「製品の変革」 というのは、自分たちがお客様にお届けしている製品やサービスを、デジタルの技術を組み入れることによって更に良いものにしていく 、という活動です。 この4軸で考えていくと、それぞれからデータが生まれるところ、例えばお客様のスクロール量とかですね。オンライン上で得られたお客様のデータを活用することによって、推測をすることだったり、レコメンデーションをする、傾向を分析する、ですとか。集まってきたデータを処理することによって、知見が得られる。こういった知見という部分を、更に、4象限に戻していく、という感覚 ですね。こうすると、データが発生したところから、価値のあるものが届く 、ということになります。 こういうものを、Microsoftでは「デジタルフィードバックループ」 と呼んでいます。こういったものを取り入れていただくことによって、DXが実現した、という世界になると。私たちとしては、こういう考え方を推奨しています。 このデジタルフィードバックループを少し深堀りしていくと、例えば、製品・サービスから色々なデータが取得されます。そのデータがたまることによって、統計学的な処理というものが施される。その新しく生まれたデータを、更にお客様に届けることによって、新しく価値を感じていただける 、と。
(例1:IoTのデータが、故障時期の予測データとしてお客様に提供される新しい価値につながる) 届ける先というのもお客様に限らず、この4象限の中でいくと、色々なところに届けられる可能性があって、また業務から発生してきたデータを更に付け加えることによって、また違った価値が生み出されます。 例えば、新製品の開発で、今までと違ったプロセスを可能にする、ですとか、参考にする情報量が増える、ですとか。
(例2:業務データの報告書とIoTデータ、故障時期の予測データがかけ合わさり、製品やサービスの質の向上につながる)
(例3:更に社員の情報やコミュニケーション履歴が加わることで、更なる業務の効率化へつながる) 4象限から発生する様々なデータを、更にセンタライズさせることによって生み出すことができるデータ、プラス、それを更に各4象限に届けることによって生まれる価値、というものがあると思うんですね 。 この図では、各4象限にどんな情報があるのか、ということを書いていますが、この話って、処理の話ではない んです。業務プロセスの効率化を目的としているものではなくて、どこかで生まれたデータを持ってきて、処理をして、他の人にそれを渡すと、どこかハッピーになるという、どちらかというとストーリーじみた話 になります。
Microsoftの取り扱っているサービスでは、このそれぞれの象限のところで役立つものがいっぱいあります。例えば、社員のコミュニケーションに役立つですものであればTeams、社員の情報共有に役立つものであればSharePoint、あとは、Azureの基盤が社内のシステムを動かすときに使える、ですとか。弊社の商品は色々なことを社内で行なうときに使っていただけるんですが、それらを組み合わせたり、あるいはこういったデータという観点で考えるといった場合に、少し難易度が上がってしまう んですね。お客様にとって、ストーリーだった考え方をしていただくというのは、アプローチとして非常に難しいという側面もあります。 なので、私たちクロスインテリジェンスセンターでは、あらゆるMicrosoftの技術に精通しているメンバーが、お客様の環境において、こういうストーリーだった考え方で、どういう活用の仕方をすると良いのか、どうやったらその環境が出来上がるのか、というようなところを、アドバイスを差し上げたり、知識面をフォローしたり、一緒にワークショップをして、もうちょっとフランクに、こういう考え方をして、会社の中で何をすると役に立つのかなーということを考えていただく 、ということを、今、取り組んでいます。 この取り組みをすることによって、私たちのサービスを、どんどん価値を生み出していただく、ということに繋げていただきたいな 、というのが、私たちの組織のタスクにもつながってきています。
金木: デジタルフィードバックループという言葉は、Microsoftが最初に提唱したものでしょうか?
吉田様: フィードバックループという言葉自体は一般的な用語として、作用した先から何か返ってくる、というものはあったんですけど、これからデジタライズされたものを意識しましょう、というのはMicrosoftが最初 だと思います。
金木: とてもわかりやすくて良いですね。