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【対談インタビュー 】 天正12年創業、逆境の時代に挑む老舗の営業改革 〜“ならでは”の接客・営業を科学する「モバイルCRM」とは~  Vol2:未来を創る戦術としての営業改革

昔からの丁寧な手法で世代をまたぐ顧客との関係を育て、「着物を装う」文化を発信し続けてきた老舗呉服店「ゑり善」。新型コロナウイルスの流行による営業機会の減少、業界規模の縮小、ノウハウを持ったベテラン営業マンの定年退職、作り手の廃業の課題など、目下の状況は厳しくないとは言えません。
そのような環境下において「ならではの接客」「本質的な価値の発信」にこだわる若きリーダー、専務の亀井様は営業改革として「モバイルCRM UPWARD」の導入を決断。逆境の時代を生き抜くための武器として、コロナ禍の厳しい状況においても、契約継続を選択頂いた理由に迫るべく、UPWARD 代表取締役社長・CEO金木と、株式会社ゑり善 専務取締役亀井彬様と、「天正12年創業、逆境の時代に挑む老舗の営業改革〜“ならでは”の接客・営業を科学する『モバイルCRM』とは~」というテーマで対談の機会を設けさせて頂きました。
「ゑり善」様の信念に基づく営業改革を、UPWARDがどのように実現させていくのか、

時代の変化の波に立ち向かうすべての企業様を勇気づける対談インタビューを2回にわたり、掲載します。

第1回はこちら→
Vol1: 企業資産「顧客情報」の蓄積が今後を左右する

目次

COVID-19がもたらした価値観の変化と、営業の本質化

金木:COVID-19 というコロナショックのインパクトがあったと存じます。御社、また呉服業界の中での事業インパクトはどういった状況でしょうか。

亀井様:コロナの影響という意味では大打撃ですね。想像以上に大きな打撃を受けております。これは、企業の経営状況という意味でも非常に厳しいですが、呉服業界全体で見ればもっと危機的状況でございます。
まず、お客様が「着物を着る機会」がなくなりました。結婚式もなかったですし、お茶会やイベント事も軒並み延期や中止となり、秋にかけても見通しがつかない状況です。着用するシーンがなくなっているということが、お客様のお気持ちにとても大きなダメージを与えています。
それから、私が最も危惧している問題が「職人さんの廃業」です。この業界は70、80代の腕のいいご高齢の職人さんに支えられてきましたが、これを機に、もう仕事辞めようかな…という方が多くおられます。その点での、ものづくりの基盤が崩れてきている点を非常に危惧しています。

金木:その状況は全国的に広がっているということでしょうか。

亀井様:はい。前から言われてきたことではありますが、このコロナ禍で、全国的に次の世代の担い手がいないという職人後継者問題が、更に問題視されるようになっています。

金木:率直な質問ですが、業界が小さくなってきて需要が少なくなる点と、職人さんの世代交代が進まないというのは直結する話でしょうか。

亀井様:色んな要素が絡み合っている問題です。
若い世代の方が入ってきても、お仕事として続かないのは、着物の業界自体が小さくなってきているというところがベースにあると思います。
小売店としては、いかにして着物の魅力を多くの方に感じて頂けるようにするか、を考え続けて、業界を少しでも大きくするための貢献をすべきだと感じております。

デジタルコミュニケーションで補えない訪問の価値は体験共有にある

金木:ありがとうございます。
そのような環境下で御社が心がけている、もしくは、今もやり続けている営業の施策や努力、スタイルの変化、チャレンジについてお話し頂けますか。

亀井様:お客様との繋がりが企業を経営する上での大きな土台になっているということをコロナ禍の中で非常に強く感じました。お客様から「みんな元気にしているの?」といったお電話を頂く事も多くございました。この時期なので、なかなかお会いできませんが、1件1件、お客様にお電話でご状況を聞きながら、着物に関わるお話以外も含めて、前向きになって頂けるように、繋がりを持ち続けています。
加えて、繋がりだけではなくて、やはり着物を通して、「和の美しさ」を感じて頂けるとお客様の心も豊かになりますので、オススメのお着物や、新しい楽しみ方をお一人、お一人に伝えていく。それを着実に進めているのがここ2、3か月です。

金木:なるほど。お客様のところへもご訪問されていたんですね

亀井様:はい、ご迷惑にならない範囲でお手伝いをさせて頂いています。小回りが利く、中小企業ならではの繋がりや関係性が深いからこそ、許して頂けたと思っています。

金木:電話では伝わらない、伝えられないところはやはりありますよね。

亀井様:そうですね。やはり実際のお品物の魅力は、肌に触れて、手触りを感じて頂かないと本当の意味では伝えられないと思います。そこは対面に、最後までこだわっていきたいなと考えています。

金木:お話を伺って思ったのですが、御社の営業はお客様に体験をして頂くという営業スタイルなんですね。

亀井様:そうですね。御覧頂くとか、そのあたりも、ある意味では一つの体験として捉えてくださっているのかもしれないですね。

金木:体験して頂く営業スタイルで考えると、飲食店なども体験のビジネスですね。
店舗に入った雰囲気、食事の美味しさ、空間を楽しませる接客…その飲食店の体験を食事だけにフォーカスしたものがデリバリーですね。
営業スタイルによっては、体験の一部を届けるということも1つだと思うんです。御社の場合は、人がその体験をお手伝いする、というところにキーともいえる価値があるんでしょうか

亀井様:体験と人というところが非常に重要だと思います。
あくまでも画一的なご提案ではなくて、今までの繋がりの中で感じた、ちょっとした気づきを、お品物に変えてご提案する。

例えば「今度、秋に着て行きたいな」という一言があれば「こんなものをご覧になられると楽しんでもらえるんじゃないか」というのを、今までのお付き合いの中でのお話も含めて想像する、妄想するというところは人でしかできないことかなと感じますね。

金木:いいですね。妄想という言葉が面白いですね。英語で言うとクリエイティブワークですね。

亀井様:ああ!そうなんですかね。

金木:想像しながらお客様と一緒に創造していくことが、御社のスタイルかもしれませんね。それが、ある意味文化ですよね。

亀井様:これは海外でスタイリストをされている方とお話して、頂いた言葉なのですが。
ものを売っているという考え方ではなくて、コーディネートしているという考え
を持ちなさいと。
どういうシーンで、どういう立場で、どういう気持ちで参加するのかをヒアリングして、それに合わせたコーディネートをご提案するということは世界的に見ると非常にクリエイティブ、価値の高い仕事
だと言われているんだよと。だからそこは自信を持ってお商売なさい、とアドバイスを頂いたことはありますね。

金木:最初にご説明頂いた「日本の美意識を今に伝える半襟」というカルチャー、考え方、フィロソフィーに結局は戻ってきますね。そこが芯ですね。

亀井様:はい。そう思っております。

なぜ、いま顧客情報管理に投資を行うのか

crm

金木:フィジカルな顧客接点を持つことが難しい時期でも、出来るだけお客様とコミュニケーションを図り、接点を設け、体験をして頂くという努力をひたむきにやってこられた。
けれど、売上の伸びが難しくなってきていて、そこの部分を分析し、科学したい、とUPWARDを導入頂いたのですが、このコロナ渦で状況が一変しました。システム投資は今はやめようという経営判断もよぎったかと思います。そんな中、UPWARDを契約継続頂きました。

専務がリーダーシップを取ってやられているお客様との接点改革・営業改革、「DX」(デジタルトランスフォーメーション)のように、営業の人に紐づいた定性的な情報をなるべく定量・定型化していくことで、お客様との関係の解像度を高めていくことが大事な時代だと思います。
その点、どのようなお考えで契約継続を頂けたのか、もう少し詳しくお聞かせ願えますか。

亀井様:弊社は、今、転換期を迎えております。戦後の創業以来支えてくれていたメンバーが退職の時期を迎えており、私も次の仲間とお店の今後の30年、50年を見ようとしております。
その中で、今まで培ってきたノウハウや考え方を企業の大事な資源として引き継いでいきたいと思っております。
ですが、どうしても口頭ベースでは形として残らないというところがございます。次の世代にきちんと受け継いでいくような土台が作りたかった。そこが、一番大きな点になります。
お客様とのつながりが、私どもは非常に長いんです
。一度、お取引を頂いたとすると、20年後に、そのお着物をその方のお嬢様のために仕立て直して、またお召し頂くということもございます。
そんな可能性もある中で、きちんと貴重な情報はお店として残しておくべきですし、それが今後のお店にとっての大きな情報になると思っております。まずは、その情報を溜め込むプラットフォームが作りたかったというところが大きなベースになります。
あとは、お客様も非常に多岐に渡って色々なノウハウをお持ちの方がおられます。ある人が聞いてきたことが他のお客様にとってもメリットのある情報である可能性があります。
そういう意味で、共有ですね。溜め込んだノウハウや、キーワードとなる出来事を皆で共有できるようにしたい
というところも今回の継続決定の大きな理由になります。

knowledgeshare

担い手不足の時代に営業組織はどう対応すべきか?

PDF18ページ

金木:ありがとうございます。 今まで御社が築かれてきた、お持ちのノウハウを溜め込んでいきたいと。
そして、これを連続的にやるべきだと。コロナショックの中でもそれを止めないことが未来のゑり善様のお客様接点の改革に繋がる
と信じてらっしゃるということですね。

亀井様:はい。
特に、今後はお客様からの様々なご相談が益々増えると思います。
着物に特化したお店が非常に少なくなってきている中で、着物に関しては何でもご相談くださいと。あらゆることに対応できますというお店でないと、なかなか生き残っていけない
と思います。
そういう意味では情報を溜め込んで、お客様により喜んで頂けるような、ご提案ができる土台作りはギアを上げて進めていかないとと感じております。

金木:お客様との関係性や、接点の質の高さは、御社が凄くこだわりを持たれているところだと思います。
一方、今後もテクノロジーが進んでいく中で、お客様に画一的な情報を広くタイムリーにお渡しして、リアクションを頂く営業の形なども進んでいます。ITの世界ではインバウンドと呼びますが、見込み顧客を作って広く浅くという事業の展開も、今後のあり方としてはあり得ると思います。
それでも、質の高い対面での顧客接点にこだわり続けている理由、想いとは
何なのでしょう。

亀井様:広く浅くも1つのスタイルですけれど、私どものスタンスは「長く、深く」がベースにあると思っております。
50年以上、5世代にわたって、担当としてお付き合いさせて頂いているお客様もおられると、ベテランの販売員が言っております。5世代ですから、非常に長いお付き合いといえます。
その中で、「美意識」というものを、日常に溶け込ませるということは、無理やりではできないと思っています。お客様のタイミングやライフスタイルの中に、そっと置いてあげるような存在がいないと、着物というものはどんどん廃れていくんじゃないかなと思っております。
単純に大勢の方に広げるというよりは、お一人、お一人に寄り添って、的確なタイミングで着物の魅力を伝えていくということが、文化を守る上では一番重要な役割
と思っております。
今後、流通が変わると言われており、メーカーさんが直にお客様に販売をするという流れも出てきています。では着物はどうかというと、ただ単に商品を買うだけではない、サービスが必要だと考えています。
私たちは、手間も勿論コストもかかりますけれども、そこのお手伝いをすべき
だと感じております。

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金木:小売店様の役割としては、そこを担うことが、すごく大事だということですね。

亀井様:この役割と採算のバランスを考えることが非常に難しい時代になってきているのは間違いないです。
その中で、やはりシステムをいかにうまく活用していけるか、限られた時間で、いかに情報を有意義に使えるかというところを考えていきたいなと思っています。

金木:世界はこのコロナをきっかけに大きく変わると思います。
多分、コロナがきっかけの一つになっただけなのですが、テクノロジーの成長に伴って人が効率的になっていくことに対して、本当の豊かさとは何かということを世界中の人が考えだしているのかなと思っています。
そういった意味でこのコロナは大きなきっかけで、本質的な生き方、本質的な価値の見直しが一気に、この短期間で進んだなと思うんです。
そんな中、御社の事業というのは、本質的な価値にフォーカスをあてていらっしゃるものだと思います。
少し前の時代には難しかったかもしれないけども、これから、本質的な価値を見出すという、新しい価値の見直しのもとに御社のフィロソフィーはフィットするんじゃないかなと、率直に感じました。

亀井様:昔から変わらないというのは、良いも悪いもあると思うんですが、非常に高度な技術と美的センスというのは時代が変わっても、大きくは変わらない本質的な魅力だと思います。
その魅力をお客様に伝えるために、私たちは、どういうことができるのか
というのは常に考えております。
また、単に人と人が会うというそれだけで、凄く価値を感じるような、この3か月になりましたので、そういった意味では対面の喜びというか、一気に考え方が変わってきてるんじゃないかと私も実感しますね。

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金木:そうですね。人と人が会うことの価値は確かに上がりました。
でも、実際、お客様に体験をして頂く部分については、テクノロジーの有効活用で、体験のバリエーションが増えるということも事実ですよね。

亀井様:はい、間違いなくそこはあると思います。

金木:人と人との出会いのようなところが価値創造の中心だとしたら、それを補うお客様へのアプローチとしての、テクノロジーの力は大きいですね。

亀井様:どう使いこなしていけるかですね。
着物を装う上で必要となるのであれば、オフライン中心ではありますけれども、精力的に取り組んでいきたい
なと思います。

金木:僕たちも、たくさんのお客様にお会いするのですが、IT 化やシステム化に対して、ほぼ迷いなく、本質的な理由もなく導入する企業様も結構いらっしゃいます。
「システム化しなきゃダメでしょう」や、「今の時代スマホを営業に持たせなきゃダメでしょう」など…その点専務とお話していると、本質的にどういうことをするための道具であるかいうことを考え続けてこられたのだと思いました。ITはあくまでも、それを実現させるためのツールとシンプルにお考えができているなと思います。素晴らしいと思います。

亀井様:とんでもないことでございます。

金木:コロナショックというのは御社にとっても本質的にお客様との接点を考え直すきっかけになったのかなと思っています。
その中で、UPWARDを選択頂きましたが、専務が次のゑり善さまを引っ張っていくにあたり、魂の叫びのような「こうしていくんだ!」というビジョン
について、お話し頂けますか?

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亀井様:世界中どこを探しても、これだけ高度な染織技術というのは無いので、この技術と文化を残せれば、注目を集めると思っています。時代の流れも、ものをたくさん作って大量消費していくという時代ではなくて、いわゆるサスティナビリティーの時代。
持続可能性というところを世界が今、注目するようになってきている中で、着物は非常によく考えられている。地球にとっても、やさしいアイテムなので、その魅力は今後も伝えていきたいなと思っています。
とはいえ、着物は日常から遠く離れた存在になりつつあります。特に買取などですけれども、着物の魅力・価値が、何千円のものだという認識になってしまっている部分もあるので、そうじゃないですよと。
本当の着物の価値はこういうことにあるんですよという発信をしていく、お客様との接点を持ちつつ、ちゃんと着物の価値を担保できる、そんなお店でありたい
と非常に強く感じております。

亀井様:最後の一軒になってでも…着物の魅力は日本に、世界に伝えていきたいというのが、ビジョンです。

金木:その戦略、戦術としては、いわゆるクラウドツール、例えば、我々のアプリケーションUPWARDをうまく使いこなして実現させていくということですね。

亀井様:おっしゃる通りです。使い勝手の良いツールがどんどん出てきていますので、一早く選定して、どう活かしていくかを実現していきたいと感じております。

金木:ありがとうございます。弊社もアプリケーションを提供するということだけではなく、お客様に使って頂き、成長して頂くためのアプローチが今後、サービスサプライヤーとして大事だと思っています。
結局、お客様の成長が僕らの成長に繋がるという考え方です。 お客様の接点改革を通して、御社の事業に、僕らが微力でも貢献させて頂きたいと思っています。引き続きよろしくお願いします。

亀井様:ありがとうございます。ぜひとも知恵をお借りできればと思います。

金木:今回のインタビューは日本の伝統を守ってビジネスをやられている方たちも本当に勇気づけられると思います。亀井専務、ありがとうございました。

対談者プロフィール

株式会社ゑり善専務取締役亀井彬

株式会社ゑり善専務取締役亀井彬
京都出身。1987年(昭和62年)生まれ。33歳。私立同志社大学商学部商学科 卒業。ゼミではフィールドワークを中心に、創業100年を超える京都のファミリービジネスの事業継承について研究。大学卒業後 東京のIT企業にて勤務。業種に特化したパッケージシステムの開発やシステム提案に従事する。結婚を機に家族のルーツを深く知る中で、現在の呉服業界の危機的状況をなんとかしたいと思い、転職を決意。現在、お客様との着物談義を繰り返しながら、日本文化の奥深い魅力を再認識する毎日。趣味は日本各地を廻り、その土地の風土と伝統品に触れること。

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介

UPWARD株式会社代表取締役社長CEO金木竜介
1973年東京都生まれ。LBS(位置情報サービス:location-based service)やGIS(地理情報システム:Geographic Information System)に精通し、これまでに200以上の関連システムを構築。国内初となるSalesforceと地図や位置情報を高度に連携させた、次世代型営業支援SaaS「UPWARD(アップワード)」を創業。現在、大手企業を中心に300社以上に導入されており、フィールドセールス向けのクラウドサービスとしては国内トップシェアを誇る。

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