―コロナ禍での対面営業の現在地
勝間: 最初に、千葉様からこのコロナショックで起きた変化についてお話しいただけますか。
千葉様: はい。最近お客様からご質問やリクエストをいただくのは主にこの3つ です。
やはりコロナで在宅勤務がかなり進んでいる こともあり、従業員のメンタルケアに関する問い合わせ が増えています。 リモートワークになると今までのような対面での会話がなくなり、その環境下での精神的ストレスによって部下のパフォーマンスが落ちている。しかし、それが察知できない。 どうやってカバーしたらいいでしょうか?といったご質問をいただきます。
当社は1年以上前からリモートワークを推奨していましたが、コロナの影響で2月末から原則在宅勤務になりました。私も在宅勤務になって、プロジェクトチームのメンバーとは毎日会話しますが、「精神的ストレス」についてはとても気になります。 次に、コロナの影響で市場全体として、営業は対面から非対面 になってくる。 在宅勤務になって、本当にきちんと営業はできているのか? 営業のラストワンマイルと表現したりしますが、営業現場における商談、その瞬間がブラックボックスになっていることによる疑心暗鬼が発生している ということだと思います。 その疑心暗鬼は日報レベルだけではなかなか払拭しきれない ので、どうやってホワイトボックス化していくか 、といったご相談をいただくケースが増えてきました。 また、圧倒的に多いのは1番のところで、非対面営業へのシフト についてです。オンライン商談へシフトしたが、「非対面営業でのやりにくさ」をいかに克服し、商談を増やし、商談クロージングの確率を向上または維持するのかという点 についてのご質問やご相談が増えてきています。
この状況下において、対面営業を中心としたスタイルの営業担当者も、軒並み在宅勤務にシフトしています し、いわゆるPipeline Generationと言われる商談を作るためのマーケティング活動やイベントも、従来の集合型は自粛や延期となっている企業がほとんど です。その中で代替手段をどのように計画し、停滞する商談作りをいかに早期に立ち上げていくのか ということは、企業にとっては経営課題と言ってもいいのかもしれません。 この営業自粛の動きは、特定の業界だけの問題ではなく、業界業種を横断して、各社同様の流れになってきております。例えば、生命保険・製薬業界 は非常に大きなインパクトが出ています。
左側の生命保険業界の動きですが、大手日系生命保険会社は、営業自粛 へとシフトしました。 一方で東洋経済ONLINE「コロナ長期化、生保に吹く販売自粛という逆風」(2020年4月15日) によれば、あるネット保険事業者は、前年同月比で約27%伸びていたり、別のネット専業保険事業者は、医療保険への申し込み件数が3月単月で前年同月比50%増になっていたり、ネットシフトしている様子が伺えます。
担い手不足の時代に 営業組織はどう対応すべきか?
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サービスご紹介資料
「UPWARD」のより詳細な情報をご紹介しています。
―“MR”がいらなくなる?
千葉様: 製薬業界では、大手日系製薬メーカーさんの決算説明会での副社長のコメント(出典:ミクスOnline, 新型コロナでMR訪問は「確実に減る」 興味引くコンテンツ提供の勝負に,2020年5月12日) で、「MR(製薬業界における営業担当)の病院への訪問規制が行われる結果として、本当に情報に困っている医師は決して多くはないと認識され、従来型の営業の在り方は大きく見直す必要があるのではないか」 と公言されています。 またこれを裏付けるように、社会情報サービス社が公表したアンケート調査のプレス資料(出典:社会情報サービス, 新型コロナウィルス感染症に関する医師意識調査【第2報】, 2020年3月27日発表) では、MRの訪問規制についての項目で「メールやウェブで代替できるため困ってない」と回答された医師が7割、一方で不便を感じている方は3割 しかいませんでした。
製薬会社の副社長も、「MRはこれから取捨選択されることになってくる。お客様(医師)のニーズを踏まえた情報や潜在的に求められている情報を、いかにリアルタイムで提供できるのかが、これまで以上にMRには求められる」 とおっしゃっています。 このようなアンケート結果やコメントからも推察できるように、「営業」という存在意義そのものが、このコロナ禍で一気に見直しを迫られているというタイミングなのではないか と思っています。 つまり、営業組織の中だけでどうしようかという話ではなく、もはやお客様とのタッチポイントをどうやって作り変えていくのかといった新たな経営課題 だと思います。
勝間: まさに、コロナショックを受けて大きく営業組織が変わろうとしていますね。そんな中で、UPWARDとしては、どういった風に今の状況を捉えていますか。
金木: UPWARDはこれまでフィールド・セールスに向けてメッセージを発信してきた ので、やはり心象的にもネガティブインパクトはあります。 ただ千葉さんがおっしゃったように、様々なことがドラスティックに変わるきっかけになった のもこのコロナのインパクトではあります。 2〜3年ぐらい前からカスタマーサクセスや既存のお客様の体験を変える、といったアプローチ は非常に大事だと言われ始めていました。マーケットがぐんぐん伸びていくというわけでもなく、シェアの奪い合いをしているような大企業は、ある程度一定のシェアを取ったならば、そこに関してはLTV(顧客生涯価値)を上げていくといった世界に突入 します。 いかに顧客満足度を上げるためにラストワンマイルの営業マンが活躍しているかが、企業の力になってきているのではないか と思います。
訪問件数を上げるソリューションは、必ずしも売上を上げるわけではありません。 訪問件数を上げることが現場の人たちにとって嬉しいことではなく、成約確度や商談確度の高いお客様を必要最低限の訪問、アプローチで商談化したい というのが、営業の最前線にいるみんなの考えだと思います。 CRMやデータを活用して必要最低限かつ安心、安全の訪問 により、営業担当者はもちろん、自分たちを通してお客様の安全も守るというビジョン を掲げ、セリングをかけていたところです。
―「〇〇さんだから買うよ」と言われる関係性へ
千葉様:営業とは「機能」なのか「人の役割」なのかが、明らかに変わってきたな と思います。単純に自社の製品がいいですよ、という話というよりは、「金木さんだから買うわ」って言われるような関係性をもう一度作り直さないといけない。 特にこの状況下では、思うようにお客様とアポイントが取りにくくなっていると思います。「忙しいからまたの機会に」と言われることもあると思いますし、普通であれば延長して会話できていたようなシーンも、興味をもって頂けなければ「ちょっと次の会議があるので・・・」と言われて中断されてしまう。 営業としてのスキルというよりも、人間力が問われる時代になったなと思います。
金木:クロージング力が今までの営業には必要不可欠 でしたが、実際には、そこから関係性が始まっている ことに、お客様も含めてみんなが気づいています。 お客様のことをどこまで本当に考えて、どういった会社の成功を一緒に目指すかというアプローチや姿勢がないと、そもそも駄目 なのかな。だからこそ、営業の本質は「売る」ということより、ずっと成功してもらう、買ってもらい続ける、そういう姿勢のアプローチが結局は売り上げに紐づく のだと思います。
千葉様: 昔は一緒に夜遅くまで飲みに行って、仲良くなって貰って信頼感を勝ち得て… というのが、一般的な営業スタイルであったと思いますが、このコロナの時代になって完全にその伝統芸を封印されている という営業の人たちも多いと思います。 そうした状況下で、クロージングの質を上げていくのは、今までと全然違う世界なので、結構大変な時代になったな と思います。
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Chapter.2 これからの営業組織 ― オンライン商談では成約につながらない ― 新しいビジネスマナー「Safety Visit」がコロナ禍での営業活動を変える ― UPWARDはモバイルワーカーのウェアラブル活動計になりたい ― (こぼれ話①)リモートワークにおける生産性向上
Chapter.3 データ・ドリブンな営業組織 ― 営業における“ブラックボックス”のデジタル化が必要な理由 ― 「ECのレコメンド機能」が開発のきっかけ ― これからの営業組織作りをされる方へのメッセージ ― (こぼれ話②)「合理性」と「偶然」のバランスとは
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