CRM=「顧客管理」をするためのシステム
CRMとは、本来の意味は「顧客との関係を良好に保ち売上拡大を目指す戦略」を指しています。CRMは、Product(商品)ではなく、Customer Relationship(顧客との関係性)をビジネスの中心に据え、「顧客に対して何ができるのか」を最重要視することで、利益の最大化を目指します。
また主に日系企業においては、顧客管理システムをCRMと称する場合もあります。CRMツールと呼ぶ場合もありますが、CRMとだけ呼ばれていることが多いです。
具体的には、顧客の名前・企業名・部署名・メールアドレス・所在地・過去の商談履歴・Webサイトへの訪問回数・問い合わせ履歴といったような定量的な情報だけでなく、顧客のニーズ・要望・意見、ときにはクレームといった定性的な情報まで、あらゆる顧客情報を蓄積し、一元管理・共有します。
そして、その管理された情報を元に、それぞれの属性別に顧客のニーズ(顧客が求めている価値)やウォンツ(顧客が求めている手段)を分析し、それぞれの顧客にあったサービスや商品の提供を実現し、顧客満足度を高めます。顧客ごとのLTV(顧客生涯価値)を上げていくことが、最終的に利益の最大化につながるのです。
顧客情報を分析し、1社1社に合ったサービス、商品を提供するといった戦略自体は、最近になって始まったものではありません。江戸時代にはすでにお得意様の情報を記載した「お得意様台帳」というものがあり、それを元にした商売が当たり前のように行われていました。
CRMとは、お得意様台帳の現代版といった側面もあります。もちろん現代ではIT技術を駆使し、より高度で的確な分析ができるようになっていますが、顧客との関係性を重視するといった点では、どちらも同じであるといえます。
CRMの真の目的は、単なる利益の最大化ではありません。利益の最大化はあくまでも結果であり、重要なのはそのプロセスです。ここに商品ではなく、顧客との関係性をビジネスの中心に据えるという意味があります。
また、2020年以降のリモートワークの推進下において、各社員の顧客接点が見えづらくなる中、CRMの活用は大きな"顧客接点の見える化"の助けにもなります。自社の製品・サービスや営業スタイルの改善ポイントのヒントは、日々の顧客接点から生まれるため、顧客接点を再現可能なデータ化するCRMは、先の見えない時代においてとても重要なシステムであると言えます。
CRMのメリットとデメリットは?
先ほどのCRMの説明を受けて、ひょっとすると「既にオンプレミスのデータベースで管理している」「Excelで顧客データをまとめている」といった方もいらっしゃるのではないでしょうか。顧客に紐づくデータを管理する、という点では、オンプレミスのシステムやExcelでも問題ありません。では、CRMに移し替えるメリットはどこにあるのでしょうか。
CRMのメリットを一言で表すと、顧客データの「一元管理」ができる点です。各営業担当者や営業チームが縦割りで管理している個別の顧客データを、CRMでまとめて一元管理・運用することで、あらゆる顧客対応や顧客分析がしやすくなります。
Excel・Accessで顧客管理をしている企業も多いかと思いますが、Excel・Accessは結果として1か所のファイルで管理を行うため、複数人での共同作業や共有には向いていません。また、データの更新作業や吐き出し作業も非常に重くなるケースが多く、更にデータはその1か所のファイルでしか見られないので、複数人で扱うには不便です。
CRMはデータをクラウド上で管理するため、リモートワーク・直行直帰でもスムーズに共同作業ができ、リアルタイムでのデータ共有もできます。営業以外の部署との共有もできるので、社内での顧客データ管理が捗るでしょう。
CRMのデメリットは、導入と運用にコストがかかる点です。新しいシステムを導入するのにコストがかかるのは当然ですので、このデメリットはCRMに限ったことではありませんが、まずは一部部署/一部拠点から始めるなど、小規模で試してから効果が見えれば全社的に展開することで、ROI(費用対効果)を検証しながら導入することが出来ます。
さらに、自社でソフトウェアをダウンロードするサービスに比べると、クラウド型であれば初期費用は少なくて済みますし、自社でサーバーを立てる必要がないので運用費も抑えられます。システムによっては費用を抑えた導入・運用も可能なので、一度お見積もりを取ってみることをおすすめします。
CRMが重視されている理由
現代においてCRMが重視されている理由は、大きく分けて2つあります。
【理由1:市場の変化が激しく、モノが売れない時代】
1つは、以前のように商品が簡単には売れなくなってしまったことです。高度成長期のように、まだモノやサービスが足りなかった時代は、「高機能で低価格な商品」をテレビCM、チラシなどで宣伝さえすれば、商品は勝手に売れていきました。
しかし、多くの企業が必要最低限のインフラやサービスはすでに手に入れてしまっているにもかかわらず、高度成長期以上にモノやサービスがあふれている現在。またそこに2020年のコロナショックが追い打ちをかけ、どんなに高機能、低価格であろうと、広告で単に認知を得れば売れるといったことは、ほぼなくなってきています。市場や顧客ニーズの変化を敏感に感じ取り、柔軟に変化に対応できる"企業変革力"が求められています。
【理由2:顧客ニーズが多様化】
そして、もう1つの理由は顧客ニーズの多様化です。いまや会社規模、業種といった大きなセグメントでは顧客の細かいニーズを推し量ることができなくなっています。
また、以前はテレビ、新聞、チラシなどといった広告や、ルートセールスからの説明や実際の商品を手に取って見る、といったことから情報を得るのが一般的でした。しかし、近年はネットの普及により、企業のWebサイト、比較サイトなどから詳細な商品・サービスの情報を入手できるようになり、他社との比較検討が容易になったことも、自社商品・サービスが選ばれにくくなった要因のひとつといえるでしょう。
市場が変化し、以前のように商品・サービスが売れなくなってしまったこと、顧客ニーズが多様化したこと。この2つの理由から、企業はそれまでの良い商品・サービスを作り、会社規模、業種といった幅広いセグメントで広く宣伝するという戦略を改めざるを得なくなりました。
そこで多くの企業が取り組み始めたのが、良い商品・サービスを作ることを前提としたうえで、顧客との関係性を良好に保ち、売上拡大を目指すCRM戦略です。この戦略は、競合他社が多く、足を使って顧客の信頼を勝ち取っていく地域密着型のビジネスに特に有効です。
CRMの活用により顧客を「個」として捉えることが出来、より顧客のニーズに寄り添った製品・サービスの提供を行えるようになります。大量の宣伝やキャンペーンを流して短期間で大きな売上を狙うのではなく、長期的な視点で良好な関係を維持していくことが重視されてきていることも、CRM普及の後押しとなっています。