“企業と消費者で成り立つ、公衆衛生大国ニッポン”として見据えるニューノーマル
金木 :御社のコンシューマーサーベイ『新型コロナウイルスによる日本の消費者の行動変容と企業に求められる対策』 では、20代から70代まで7,000人の声 を拾い上げて詳しく調査されたと伺っています。ぜひ、どんなトレンドがあったか教えていただけますか。
吉本様 :今回の調査でより顕著に浮かび上がったのは、“企業と消費者の意識と活動で作る公衆衛生確保” と、これを受けた“企業と消費者のタッチポイント(場所)・時間の使い方の見直し” です。後者のトレンドは既に存在していましたが、コロナ禍で如実になった上に、更に加速しました。これは業種業態を問わず起きた変化で、その起因の1つと言えるのが消費者の行動変容 にあります。
今回の調査では、消費者の属性(性別/年齢/年収など) を網羅的に押さえたこと、また新たに出現したリモートワーカー/非リモートワーカー といった属性別に分類した消費行動の違い を、様々な商品・サービスの購入/購入チャネル別(業態別) で明らかにしています。また、それぞれの消費行動の背景にある企業に求める思い(Why) を把握しています。
(EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社「新型コロナウイルスによる日本の消費者の行動変容と企業に求められる対策」(2020年10月27日) より。「感染症対策を講じている」ことの重視度 はこれまでの付加価値を上回る。) 例えば宅配サービスでは、「送料無料」「翌日配送」が前提 だったものが、「費用や時間が掛かっても、届くのが遅くなっても良いから、公衆衛生を保ってほしい」 というニーズに変わりつつあります。
金木 :海外の調査では、まだ感染が拡大している地域では節約の傾向にあるとか。新型コロナウイルスの感染拡大が収束したか否か で、結果が異なってきそうですね。 衛生面での意識の高さ が、国単位での新型コロナウイルスの収束を早めている気がしています。
吉本様 :企業に求めるニーズの順位としては、大きくは「公衆衛生」 、「価格」 、「サービスレベル」 という順番になっています。すべてを求めるのではなく、企業の活動の困難性 や社員の苦労にも一定の理解 を示し、これを考慮した上でのニーズの順位付けだと言えそうです。
(DBJ・JTBF「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」(2020年8月) に よると、コロナ収束後に訪れたい国は日本がトップに。他国と比較すると、理由に「清潔」を挙げた割合が最も高かった。)
金木 :こうした結果が出る中、僕らのようなBtoB企業、BtoBtoC企業として気になるのは、お客様が企業に何を求めているか? という点です。 やはり、企業としての新型コロナウイルスへの対応 や、顧客アプローチの丁寧さ 、適切さといった部分なのでしょうか?
吉本様 :そうですね。消費者は、「衛生面が確保できているか」「有識者のサポートを受けて感染拡大を防ぐための対策が行われているか」 という点も判断基準に入れてサービス、ブランドを選んでいます。企業側もこれに対応して、企業市民の一員 としての、自社の考え方・施策 を誠実に正しくお客様にメッセージとして発信していかないといけない 、という時代ですね。
消費者、お客様の動きをいかに把握するのか
金木 :調査を見ると、「いかにタイムリーにお客様のニーズを吸い上げるのか」 が今後の成長戦略のカギになるな、と感じます。新型コロナウイルスの感染拡大が、物事の“本質的な価値”を浮かび上がらせるきっかけ になったな、と。 これまではお客様の動向にリアルタイムに寄り添わなくても、マーケットのシェア争いだけである程度モノが売れる時代 だった。でも今は、海外製品もオンラインで気軽に買える時代になり、そこもコロナ禍で更に加速しているので、マーケットリサーチだけでは戦えなくなってしまった。 自分の会社の一番のファン や、お客様へのアプローチ を行い、インサイト を得て、自身のサービスやプロダクトを磨いていく、といった志向がないと、日本のエンタープライズ企業はこれから生き残れないなと感じています。
吉本様 :仰る通りですね。顧客ニーズを吸い上げる という意味では、私の知人の酒類飲料メーカーのマーケッターは、毎朝ごみ袋をあさって、「何と一緒に呑んでいるのか、どれくらいの量を呑んでいるか」などを本当に泥臭く調べていました。その肌感を持って社内の開発に意見を出したり、メッセージの発信などをしていますが、そういった現場のデータはとても強い ですよね。 この例はかなり突き抜けた事例なのですが、日本のBtoB、BtoBtoC企業では少し前まで消費者情報が手に入りにくかった のは事実です。 実際の商品の購入や消費の場は、代理店(小売業や飲食業)のみが接点を持ち、自社のクライアントやお客様と関わる機会 が持ちづらかった。 変化をスピーディーに正確に捉える必要が出てきた今、デジタルマーケティングマネージャーを積極的に採用するなどDXを取り入れて、“お客様とつながるファイナルチャンス” を確実に奪取する。このテーマを最重要施策と位置づけ、多くの企業が内外のリソースを総動員していると感じています。
金木 :消費者側が企業を選ぶのと同時に、企業側もお客様についての情報を把握していくことが重要 ですね。日々変化するお客様の情報をリアルタイムで把握して、必要なものを必要なときに内外で活用できるような情報を創る。それが、DXの最終的な姿 かなと思います。
吉本様 :企業としては、こういう時代だからこそ、その企業のPurposeやコロナ禍における取組方針 は、中長期のメッセージ として社内外に対して正確にコミュニケーションし続ける必要があります。これがある前提で、短期的な施策レベルは素早く変化するマーケットに合わせていく ことが重要です。「私たちはこういう存在です」 というメッセージを社内外に出しながら、日々の施策はリアルタイムに近い形でお客様に合わせてチューニングをかけていく、という動きは加速するでしょうね。
(リアルタイムに収集されたお客様の生の声を元に、自社の強みを活かしていくことが重要になる)
担い手不足の時代に 営業組織はどう対応すべきか?
PDF 18ページ
サービスご紹介資料
「UPWARD」のより詳細な情報をご紹介しています。
コロナ禍で高度化した営業機能と、既存の強みを掛け合わせる
金木 :吉本様がコンサルタントとしていろいろな企業の方とお話しされる中で、特にこの状況に危機感を持たれている経営層の方はどこの業種に多いですか?
吉本様 :電機、自動車、製薬など、日系の伝統的な企業 ですね。こうした企業の役員、経営層の方々は、会社のためにがむしゃらに働く企業戦士 として過ごしてきた方々も少なからずおられるので、現代の若手社員の“躍動感のなさ”を心配 しているように感じます。コロナ禍になる前からですが、更にそれが顕著になってきているようです。 例えば、新しい仕事のやり方を造る、新しい商品やサービスを作る、などのいい意味の“悪巧み・いたずら” を、社内で見かけなくなってきているようです。
金木 :なるほど。働き方改革にコロナ禍が重なって、自分たちの成功体験をそのままなぞらせる訳にもいかない状況 ですしね。
吉本様 :特に営業活動においては、これまでの勝ちパターンだった(と考えられてきた)対面コミュニケーションに過度に依存した営業 は難しく、この状況は継続すると考えられています。コロナ禍で訪問を控える傾向があったこともあり、オンライン面談 やマーケティングオートメーションの活用 など、デジタルシフトしていくのは大きな流れであり、これ自体は更に加速していくと考えます。
(ロボフィス株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ「withコロナ環境における、遠隔営業活動やオンライン会議ツールの利用」(2020年9月8日) によると、オンラインでの営業活動実施率は74.3% に昇っている)
吉本様 :ただ、デジタルで環境は激変したと言われても、私たちの1日は24時間 であり、そのうちに仕事に割ける時間も変わっていません。むしろ社会的な風潮・法制度等により短くなってきています 。これは当然ですが自社もクライアント、お客様も同じです。 この限られた時間の中で企業からクライアント・お客様に適切な営業コンテンツをコミュニケーションする為には、大きな方向性としてはデジタルシフトではあるのですが、その前段でお客様とのコミュニケーションをどの方法(オンライン/オフライン)で、何をコミュニケーションするか を改めて考えいく必要があります。
金木 :デジタルコミュニケーションも進化していますが、それでもオフラインとは全然情報量が違いますよね。オンラインでできるのは、情報共有まで だと僕らは考えています。顧客の真の課題 、表情 や雰囲気 の把握、信頼感 やロイヤルティ の醸成などは、オフラインでしか取れないのではないかと。 熾烈なデジタル化競争の時代 に入り、お客様の元に届くオンラインの情報量はすごく多いので、埋もれてしまう。いかに、オフライン戦略に持ち込むか が差別化につながると考えています。
吉本様 :お客様に対面して(オフラインで)会う時間は、限られてくるでしょう。そしてより特別なものになると考えられます。だからこそ企業は伝えるコンテンツをより高度化 し、営業担当にはそれを伝える・お客様の状況を把握する高度な技術 、加えて企業の姿勢を誠実に表現する人間力・センス が更に求められるようになる。 今後、この営業機能の高度化の流れを受けて、人数自体は減るものの、営業担当の選別 がいい意味で始まるのではないでしょうか。企業も優秀な営業担当を育成し、必要に応じて外部からの採用を積極的に進めるなどの営業組織・人材の高度化 をより積極的に進めていくものと予測しています。
金木 :そうですね。同じように、製品力という面からもその必要性はある かなと感じています。 Amazonで買い物するときは、機能 と値段 重視。店舗で購入するときには、他の要素 も入ってくる。オンライン化が進みすぎると、単純に日本製は海外製品に負ける。そういった面でも、差別化として、オフラインの顧客接点のデータ をしっかり企業として溜めて戦略を打ち出していく、というのはとても重要になると考えています。 そこで僕らは、2020年7月に「UPWARD AGENT」 という、位置情報をCRMにシームレスに連携するスマホアプリ をリリースしました。
金木 :「現場のラストワンマイルを革新する」 というのが、僕らのミッションです。ラストワンマイルの顧客接点の情報 をきちんと拾い、デジタライズ していくということ。そしてデジタライズしたものを、企業にとって価値のある情報に意味化 していくことです。 「UPWARD AGENT」は、オンラインでは入手しづらい、“オフラインのラストワンマイルのデジタル化”にフォーカスしたサービス でありたいと思います。
吉本様 :どこをどのようにDXしていくか、というテーマは、そもそもの「企業と消費者でどのようなコンテンツのコミュニケーションが行われるか?」「それはどのタイミングで、どのタッチポイントを経由して行われるか?」といった“コミュニケーションタッチポイントのDesign(総合的な設計)” があって初めて意味を成すものだと思います。30年以上前から続いてきた営業モデルは既に破綻をきたしています 。また営業も含めたタッチポイントのDesignも見直しは必須です。 高齢化などの日本の人口動態変化 、都市部集中 、日本語以外のコミュニケーションの割合の増加傾向 、また優秀な人材確保の難しさ 、コロナ禍を経て加速する非対面コミュニケーションへのシフト などを考慮すると、各地域に総花的に配置してきた営業拠点、営業担当、これを中心にしたタッチポイントについての見直し はほぼ全ての企業で検討されており、より加速していくものと思われます。そして、このタッチポイントDesignの中で、“新たに再定義された営業”にはより高度な機能が求められる流れ も加速するものと思われます。 そこに「UPWARD AGENT」のようなソリューション を当てはめていって、DXを実現する ということが非常に大事だと思います。 まさに、日本の多くの企業はこのDesignの力が足りない 。また、Designしたものを現場に実装するときに、怖がってしまう 。既存組織の軋轢 があったり、お客様が離れてしまう のではないかとか、競合他社が別のことをやっていたら どうしよう…などの恐怖 ですね。なので、営業フロント周りのDXは進みづらい。 ここを進めるためには、既存組織起点でタッチポイントをDesignするのではなく、消費者起点で、本調査も含めた環境変化を考慮してDesignすること が重要です。
新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけとしてあり、変えざるを得ない状況ができましたので、これが「UPWARD AGENT」のようなツールを使って、DXを加速させるラストチャンス だと思います。
金木 :まさに、今があらゆる変革の大きなチャンス ということですね。我々も、プロダクトを通じて、営業組織におけるお客様のコミュニケーションDesignを支援 していければと思います。 本日は貴重なお話、ありがとうございました。